Express Urostar

泌尿器日常診療まとめ・日々のted

背部痛の地雷を踏まない!尿管結石診療。

どんな時に「尿管結石」として帰宅させられるか。

.

背部痛患者の地雷を踏まない(踏んでも傷が浅くなる)方法。

当直中、患者が背部に激痛を訴えてくることがあります。大抵の場合、それは尿管結石が原因となっていますが、たまに大動脈解離や心筋梗塞、急性膵炎、憩室炎など恐ろしい疾患が隠れています。さてこういった疾患を問診や尿検査、血液検査、エコー、CT、心電図など救急外来で出来る検査をモリモリやったとしても100%鑑別できるでしょうか。僕は不可能と考えています。大動脈解離は造影までしたとしても全て所見が得られる訳ではないし、憩室炎なんてそう簡単に診断することはできません。

第一、救急外来でトロポニンTやら造影CTやら全て出来る施設は相当限られているでしょう。

.

これから書くのは「背部痛の原因となる地雷疾患を100%否定はできない」という考えに基づいた、患者を尿管結石として帰宅させる際の僕のカルテ所見です。

.

尿管結石患者のカルテ所見例(身体診察や検査所見を中心に)

全身状態良好、意識清明、摂食良好、バイタル安定。

腹部平坦かつ軟、圧痛なし、反跳痛なし、背部叩打痛なし。

尿検査: 沈渣にて赤血球多数

エコー: 水腎症あり

KUB: 結石を認める (大きさと部位も記載)

腹部単純CT: 水腎症および尿管結石を認める (大きさと部位も記載)

※現病歴はもちろん詳細に書く前提です。尿管結石の既往があれば詳しく書きます。

※血液検査ができるのであれば、採血上問題がないことも記載しています。

.

検査所見でここまで記載した後、さらに患者には「尿管結石が最も考えられるが、他の疾患を完全に否定した訳ではない。症状が強くなったり、何か不調があった場合は直ちに医療機関を受診してください」と伝え、カルテにもこの説明内容をきっちりと書きます。

.

ここまで記載すれば、もし帰宅させた患者が何かしらの疾患で突然死して、病院や自分のことを訴えて来たとしても、診察時の注意義務違反に関しては争点にできないのではないでしょうか (ほかの内容で訴えれるかも)

.

 

上の所見はいささか大袈裟な内容かもしれませ。ただ大切なことは、背部痛患者を尿管結石と決めつけて、雑に診察すると地雷を踏む可能性があることを認識しておくことだと思います。