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泌尿器日常診療まとめ・日々のted

医師がすすめる会社(学校)をずる休みする方法

会社や学校をずる休みしたくなることありますよね?

そんな時、皆さんはどんな理由を使っていますか?

「親戚の葬儀」、「インフルエンザ」、「マンションの業者立ち入り」、、。

皆さん色々言い訳をよういしていると思います。なかでも「インフルエンザにかかりました!(皆うつされたくないから休んでよいですよね)」をはじめとする仮病は鉄板ネタと思います。しかし仮病を休む理由にするには大きな問題があります、

それは診断書の提出を求められる可能性があることです。

今回、突然ずる休みしたくなったい際に、一度だけ使える言い訳を教えます。

それは、「親(祖父母)が小脳出血を起こした」、です。

脳出血とは簡単に言えば高血圧などが原因となり、小脳に存在する血管が破れて、小脳の機能が悪くなることです。

この病気を選ぶ理由は①みんなあまり知らない、②軽度の小脳出血は安静、点滴加療で治まるため後日職場(学校)で親の治療の様子を聞かれたときに説明しやすい、③基本的に突然発症する病気なので突然のずる休みの理由になる、④脳梗塞心筋梗塞と違って生命の危機に陥ることが比較的少ない、⑤出血さえおさまれば症状も簡単におさまり社会復帰しやすい(後日、ばったり職場の人と親が会ってもばれにくい。脳梗塞では麻痺などが残ることが多く元気に歩く親の姿を見られるとばれます)。

こういった理由から小脳出血を勧めます。

会社には「昨日夜中に親がめまいがするというので救急外来を受診した。頭のCTをやったら小脳出血と診断されて緊急入院した。入院準備を手伝うので今日休みたい」と伝えましょう。ずる休みする本人ではないから診断書の提出も求めてこないでしょうし、話にリアリティがあるからそう簡単には突っ込んでこないと思います。

会社側から治療の経過など聞かれたら、「血圧が落ち着いたので点滴の治療をしています。症状は軽いので1週間程度の入院で大丈夫なようです」と伝えます。

あとは入院先の病院を事前に決めておきましょう。大きな病院で神経内科もしくは脳神経外科をもっている施設ならokです。大学病院であればまず問題ないでしょう。

一つ注意してほしいのは、会社(学校)側の責任者やずる休みに対して口うるさい人の住んでいるエリアや出身大学との関連(東大、慶応、日大、東海など)がある病院はやめましょう。「入院先は○○大学病院です」と言って会社側から「そこの脳神経外科の部長は同級生だよ。よろしく言っておくよ」などと言われたらアウトです。

また、入院見舞いの花を送ってくる可能性がある場合は入院先をはっきりと言わず、「えーと、○○駅の近くの大きな病院です」と、はぐらかすのが良いです。

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最後になりますが、これはあくまで嘘をついて休む方法ですので、正当な手続きで休暇が取れるのであればもちろんそれを勧めます。

ズルしなくても休みやすい社会になることを私は希望しています。みんな働き過ぎですよね、、。

 

 

尿管結石による敗血症の恐怖.

尿管結石症を併発した腎盂腎炎で訴訟が起き、被告となった病院が敗訴したようです。


尿管結石患者死亡 「診断ミス」と病院側に3千万円賠償命令 水戸地裁:イザ!

 

症例の詳細は分かりませんが、いくつかの報道を合わせると、

石岡第一病院で尿管結石症患者が入院し、不運にも腎盂腎炎から敗血症を起こし、亡くなってしまったようです。

泌尿器科医以外では知られていないことですが、尿管結石による尿路の閉塞を合併した腎盂腎炎 (いわゆる結石性腎盂腎炎)では、通常の抗生剤による加療のみでの回復が困難なことが多いです。尿管ステントなどのドレナージの処置をし、強力な抗生剤加療が必要となります (ただしドレナージが結石性腎盂腎炎に有用であるという明確なエビデンスはありません。)。

Common diseaseといって良いほど腎盂腎炎はありふれた病気ですが、尿路の閉塞をエコーや腹部CTで確認し、もし水腎症があったら迷わず泌尿器科医にコンサルト (もしくは泌尿器科医のいる病院に搬送)しましょう。

研修医の皆さん、こんな時は泌尿器科を呼んで! - Express Urostar

 

 

追記、菅原文太さん亡くなる

以前に喫煙と膀胱癌の関連を調べるために芸能人の膀胱癌罹患状況と喫煙歴をまとめました。

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その中で進行した膀胱癌にも関わらず膀胱全摘をせず、先進的高度医療(陽子線照射と動注化学療法)により膀胱癌を治療した菅原文太さんのケースにも触れました。その後の経過は不明ですが、2014年の11月28日に菅原文太さんは『転移性肝癌』にて亡くなったそうです。
転移性肝癌、つまり肝臓以外の臓器に出来た癌が肝臓に転移したとのことですが、ネット上に原発巣の記載は見つけられませんでした。
『膀胱癌は完治したから、どこの癌が原発なのか』という記載をネット上に散見しました。菅原文太さんのように原発巣、つまり膀胱に存在する癌が治療により縮小もしくは消失しても、その後転移は起こりえます。これは癌細胞が血管内やリンパ管内を循環しているためと考えられています。原発巣への治療(手術、放射線照射、陽子線照射など)だけでは循環している癌細胞には効果がないため化学療法をやる必要があります。菅原文太さんのケースは膀胱癌診療を考える上でいくつかの重要な点を含んでいます。
①膀胱全摘+化学療法を回避したこと
菅原文太さんは進行した膀胱癌なので本来であれば膀胱全摘と化学療法が必要となります。これら治療は両方とも身体に大きな負担をかけますし、膀胱全摘は術後の生活に大きな影響を及ぼします。膀胱を摘出すると、腎臓で産生さえた尿は行き場を失うため新しく尿を貯める場所を作らなければなりません。新しい尿を貯める場所としては、自分の腸の一部(基本的には回腸)を切除して膀胱にする手術、人工膀胱を埋め込む手術、腎臓から膀胱への尿の通り道(尿管)を直接皮膚に出しストーマを付ける手術、などがあります。いずれにせよ膀胱のように尿を収縮して押し出す能力や貯める能力は元通りにならず、自分で尿道から管を入れて尿を出したり、尿をためる袋を逐一変えたりする必要があります。このような状況となっても頑張って社会生活を送っている人はたくさんいますが、負担となっているのは間違いありません。菅原文太さんは膀胱を温存できたことで膀胱癌治療後でも仕事をやり続けられたのかも。
②先進医療の有効性
菅原文太さんが行った陽子線+動脈内注入化学療法は一般的な治療ではありません。
症例数の集積が膀胱全摘+化学療法よりも少ないため、有効とは考えられているものの、確立された治療法とは言えないでしょう。もし菅原文太さんが膀胱全摘+化学療法を選択したのであれば肝臓に転移せずもっと長生きすることができたのか。それは誰にも分かりません。
ただ一つ言えることは①で挙げたように生活の質は膀胱全摘+化学療法よりかは落とさずに済んだのでは、と思います。
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癌への治療法は進歩し、多岐に渡っています。施設によって出来る治療も大きく異なりますし、値段もまったく違います。最近は患者さんと医師が相談してどの治療法を選択するか相談する機会が増えてきており、私自身は良い傾向と考えています。菅原文太さんが行った選択は、今後の癌治療方針の決定について良い影響を与えたと思います。
最後になりますが、名優菅原文太さんのご冥福をお祈りいたいます。
 

これで書ける!医学研究倫理審査の書類

医学研究において、倫理審査が厳しくなり、書類を書く機会が増えています。施設によっては、研究計画を倫理審査に通さないと、患者情報をカルテからあつめるだけでも罰せられるとこもあるようです。施設により書式は違うでしょうが、基本的なポイントについて。

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①目的は、はっきり書く
『癌のステージと腫瘍マーカーの関連わしらべる』とかではなくて、この計画の成果で何が良くなるのか、明確に書きましょう。たとえば、『膀胱癌は腫瘍マーカーが確立されてなく、進行してから発見されることが少なくない。マーカーの確立により早期発見方法を開発する』とか。
②役割分担をはっきり書く
研究担当者はA、B、Cの三人です。というのではなく『Aは統計処理、Bは解析、、』というように具体的な役割分担をいれましょう。
③連結と匿名化の処理についてはっきり書く
連結とは、試料と患者情報を結びつけることです。試料の解析だけで済む研究なら(集めた喀痰の中における菌の割合とか。)『連結不可能』です。試料の情報と患者情報(年齢、性別、症状、臨床症状とか)の解析を行う場合は「連結可能」になります。
匿名化とは症例のIDではなく、それぞれに研究番号を自分で設定することです。通常、症例IDと研究番号の対応表は研究分担者の誰かが保管(ネットと繋がらないstand aloneのロックがかかるパソコンなど)します。
患者個人情報が最も保護されるのは「連結不可能匿名化」になりますが、この手続きをすると前述のとおり臨床情報と試料の情報との関連を研究することが一切できません。多くの臨床研究は「連結可能匿名化」になるのではないでしょうか。
④同意取得方法についてはっきり書く
「200X年X月Y日から研究、教育への使用の同意書」を用いて説明し患者から同意を得いている、というように使用した書類と、その書類を運用開始した時期について書きましょう。もし使いたい症例や試料がその運用時期から外れていたら、「ホームページ上で研究について開示した」などの旨を記載する必要があります。
また採取時に同意書を取得していなかった症例に関してはopt out(注1)の手続きを取ることが必要となることもあります。
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注1: opt out
opt outとは患者が拒否の意志を表明しなければ同意したとみなす方法です。具体的にはホームページ上に「○○という研究では当院○○科でxxxx年からyyyy年の間に採取した試料を用いて解析をします。試料の使用を拒否する方は相談窓口までご連絡ください」と開示する方法です。
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参考
1. 厚生労働省 臨床研究の倫理指針
臨床研究のルールブックです。倫理審査はこれを元に行われます。用語集もついてます

http://www.mhlw.go.jp/general/seido/kousei/i-kenkyu/rinsyo/dl/shishin.pdf

2. 臨床研究の倫理指針についてわかりやすく解説した本です。実際の書類の例もついてます。


Amazon.co.jp: 厚生労働省臨床研究に関する倫理指針―これならわかる、使える: 大西 純一: 本

ダマされるな!糖質制限で癌は防げません!

最近ネット上で話題になっている「糖質制限で癌が防げる」という話について

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まず初めに言いたいのは、「糖質制限で癌が防げる」というのは嘘であることです。先日外来で患者さんがネットのページをプリントアウトして持ってきて、「これって本当ですか?」と質問を受けました。そこには「米を食べなければ癌にならない」とか、「癌は生活習慣病である」とか、「化学療法は体に有害である」とか、、とんでも無い事が書かれていました。以下、私が外来で患者さんに説明した内容です。

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①糖質制限で癌は防げません。

PET検査は糖質に類似したものを癌に集積するのを検出する、というのが糖質制限説の根拠のようです。もちろん癌は糖質代謝が盛んに行われています。しかし、他の3大栄養素である蛋白質や脂肪も代謝が盛んです。PETで蛋白質や脂肪と類似した物質を使用していないのは、これらの管理が難しかったり、コストがかかるためです。バランスの良い栄養を取ってください。偏った食事を続けていると場合によっては癌以外の脳血管障害や心筋梗塞など、もっと命に危険を及ぼす病気にかかることもあります。

②癌は生活習慣病ではありません。

生活習慣病というのは基本的には血管障害などの病気をさします。もちろん「喫煙も生活習慣の一つです」と主張するのであれば、広い意味では癌も生活習慣病にくくれるかもしれませんが、その考え方は一般的ではないと思います。

③化学療法は癌に効くものもあります。

化学療法の多くは副作用がでます。しかし、これで延命出来ている人がたくさんいるのも事実です。キノコを食べると癌に効くとか、免疫を高めて癌を倒すとか、色々な説が流布されていますが、私たちは一番多くの人を高い確率で救う方法を選びます。副作用対策も頑張っています。もちろん化学療法を行ってつらい副作用に耐えることで得られる寿命よりも、何もせず自然に寿命を全うすることの方を選ぶ方もいます。話し合いながら治療法を選びましょう。

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「癌は糖質制限で防げる」、この嘘が何故こんなに流行っているのか不思議ですが、これを末期がんの方が読んだらどう思うでしょうか。末期がん患者の多くは毎日不安で、もし画期的な治療法が突然現れないかなと望んでいる方も多くいます。こういった方が「癌は糖質制限で治る」という記事を読み、不必要な食事制限を始めるとQOLをひどく損ないます。

それにしても、こういった嘘の記事を書いている人たちの目的って何なのでしょうか。自分のfbのいいねを増やしたり、自分の本を売ったりするために精神的に弱っている患者さんを騙しているのだとしたら許せません。

ただ善意でシェアしてるのも有害ですけどね。

初期研修医向けエントリまとめ

これまでに書いたエントリの中で、初期研修医に有用なものをまとめました。
触れることのない泌尿器科の真髄がここに!(大袈裟)
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研修医が当直中、どんな時に泌尿器科をコンサルトするべきか
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尿管結石を含む背部痛疾患の鑑別について
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せん妄への対応について
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眠剤の選び方。人気のエントリ
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バルーン挿入が難しい症例に当たったら

尿路上皮癌pT1の診断をめぐって

膀胱癌pT1の診断がついたらどうします?
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膀胱癌、深達度T1。
この診断がついた時、僕ら泌尿器科医は迷います。
すぐにsecond TURをして、取り残しをやっつけAND詳細な深達度評価をするか。
このまま経過観察とするか。
high gradeでCIS成分があり、巨大な腫瘍だったら人によっては膀胱全摘するかもしれません。
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T1の診断がついた時、僕ならどうするか。答えは『病理に聞きに行く』です。
T1、即ち間質浸潤ありとはいえ程度により差があります。間質にごく少量が入っているのか、それともガッツリと入っているか。病理医が血眼になってやっと認識できる程度か、それとも簡単に浸潤が見つかるものか。泌尿器科に詳しい病理医であれば詳細に浸潤の程度を記してくれるかもしれませんが、大抵の場合は期待できません。なぜならば、多くの病理医はT1が膀胱癌治療方針の分かれ道になるこのとを知らないから(泌尿器科医が知らせていない、とも言える)です。
なので泌尿器科医の皆様、尿路上皮癌pT1の診断が出たら病理に確認しましょう。無駄なsecondTURを回避したり、膀胱全摘のタイミングの遅延を防げたりするかもしれません。また、病理に行った際にはpT1の診断の意味を病理医に伝えましょう。
参考
T1G3症例を浸潤の程度でT1a、T1b、T1cに分けたstudy