入院患者がせん妄起こした~、って時の対応
高齢者を入院させたらせん妄起こして、ナースから苦情の電話がじゃんじゃん来る、、、という状況を体験した方は少なくないはず。せん妄への対応の仕方についてです。
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せん妄とは:多種多様な要因により意識、注意障害、認知の全体的な障害、精神運動性障害、睡眠覚せい周期の障害、感情障害などが生じ、これらの障害がいりまじり多彩な臨床症状を示している状態。
この内、精神運動性障害、感情障害はせん妄の病型により方向性が異なる反面、意識、注意障害、認知障害、睡眠覚せい周期障害は一貫して存在し、より本質的な障害と考えられる。
① アルコール・鎮静睡眠薬の離脱、てんかん、悪性症候群の存在をチェック
離脱せん妄→diazepam。てんかん→抗てんかん薬。悪性症候群→向精神病薬は使いずらい。
② 身体状態から経口摂取が可能か考える。筋注は患者の被害感を増強するのでできるだけ避ける。
③ せん妄のタイプと重症度判断。
1)睡眠覚せい周期は消失し、常に精神運動興奮が顕著→過活動型
重度で経口不能であればhaloperidol(セレネース)の経静脈投与が第一選択。セレネースを充分量投与しても効果がなければBZ系薬物の併用。これでも効果が不十分ならばhaloperidolをchlorpromazineに変える。
比較的軽度で経口可能ならば副作用の少なさからrisperidone(リスパダール)、quetiapine(セロクエル)、olanzapine(ジプレキサ)などを選択する。
2)睡眠覚せい周期は逆転し、夜間にのみ精神運動興奮が認められる型→混合型。
経口可能ならばtrazodone(レスリン)を第一選択。Trazodoneでコントロール不良であればBZ系薬物の併用を行う。第三選択は過活動に準じた対応。ただし夕から夜間を中心に薬物療法を行う。非定型抗精神薬では作用時間の短いquetiapine(セロクエル)が好適。
3)睡眠覚せい周期は消失するも、明らかな精神運動興奮は存在しない→低活動型
身体状況は重篤で、薬物療法の効果が期待できない場合が多く、薬物療法を行わない決断も大事。薬物療法を行うとしても身体状況を増悪させない薬物を選択する。そのため鎮静化作用を持たない薬物を使用する。
睡眠覚せい周期の是正にmecobalamin、認知機能の強化を目的としてciticoline、aniracetamが選択される。1種類で効果が認められない場合は他剤へ変更する。
身体的に余裕がある症例ではtrazodoneや定型抗精神病薬など混合型に準じた治療も有効な場合がある。
④ 効果判定
鎮静作用のある薬物では2・3日程度、鎮静作用を持たない薬物では数週間程度の期間が必要。
⑤ 投与量
高齢者や腎・肝機能障害がある症例では初期量を特に少なくする。また高齢者、Parkinson病患者、HIV患者、長期投与の必要な痴呆患者など錐体外路症状をきたしやすい患者ではtrazodoneまたはquetiapineを推奨する意見がある。それでも過沈静となる患者ではperospironeも考慮に値する。