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ペロニー氏病のガイドライン

EAUのガイドラインにPeyronie’s diseaseの項目があった!

 

陰茎が曲がって困っちゃって、、、て人、たまに来ますよね。

いわゆるペロニー氏病ですが、EAUはきちんとガイドラインを作っていました。

私はEAUのポケットガイドラインをたまに開いてますが、この項目があることに全く気付きませんでした。

(日本でも性機能学会から出てるED診療ガイドラインにペロニーの項目があります。)

以下、そのまとめです。

 

定義

定義に関してはっきりとした記載はありませんが、EAUガイドラインでは陰茎彎曲を先天性と後天性に分け、後天性はペロニー氏病による、としています。

 

疫学

有病率は0.49%

 

原因

はっきりとは分かっていませんが、繰り返す微小血管障害や外傷が仮説として広く知られています。

 

病理組織学的所見

線維芽細胞の増生がみられ、一部は筋線維芽細胞へ分化しています。その他膠原線維の増生、フィブリンの沈着、弾性線維の断裂が特徴です。

遷延する炎症により結合組織の構築改変が生じ、硬結が生じます。

 

病態

2つのphaseから成ります。まず急性炎症反応のphase(陰茎に痛みが生じ、柔らかなplaqueがみれらる)。そして線維および石灰化のphase(硬いplaqueをみます)

 

リスクファクター

肥満、高血圧、脂質代謝異常、虚血性心疾患、性機能障害、喫煙、飲酒。

 

ペロニー氏病の患者のうち9-39%がデュピュトライン拘縮を合併し、デュピュトライン拘縮患者のうち4%がペロニー氏病を合併し、他にもledderhose diseaseの合併も有名(いわゆるpalmar and plantar fibromatosis)


ガイドラインが推奨する診察項目

1)問診: 罹患している期間の長さ、陰茎の痛み、陰茎の変形、膣への挿入が困難か、EDがあるか。

2): 視診・触診: 陰茎長、勃起時の彎曲の度合。

※エコーでのplaqueの測定も推奨されていますが、クリニックでの日常診療においては推奨しないと記載しています。

 

治療戦略

疼痛、形状の悪化、エコーで石灰化がないような活動期には保存療法です。

疼痛がないく、病勢が固定し、plaqueが形成されると外科療法の適応となります。

 

保存療法

1)内服:

EAUガイドラインでは陰茎の疼痛およびplaqueサイズの増大の抑制に、

para-aminobenzoate(日本では未承認)が有効としています。よく処方されているビタミンEは陰茎彎曲、疼痛、plaque形成には有効ではないとのこと。エビデンスは不明ですが、その他ガイドラインで挙げられている内服薬はタモキシフェン、コルヒチンなどです。

2)Extracorporeal shock wave

疼痛に対して有効。Plaqueサイズの減少や彎曲の改善は期待できない。実際に見たことがありません。どんな風にやっているのでしょうか。

3)陰茎内注入

ベラパミル、ステロイドインターフェロンなど。

外科療法

陰茎のサイズや彎曲の強さに合わせて、陰茎短縮法や移植術などが選択されます。

 

付記

以上、EAUガイドラインにおけるペロニー氏病の概要でした[1]。内服薬の選択は、現実的にはビタミンEでしょうか。あとEAUのガイドラインにはありませんがトラニラストを処方する先生もいるようです[2]

EAUガイドラインに多く引用されていたjournal of sexual medicineインパクトファクターがここ数年で一気に低下しています。なぜだろう。

 

参考文献

[1]: EAU guidelines for penile curvature

 

[2]: 永尾光一, 他:陰茎彎曲症とペロニー病の治療, 臨床泌尿器, 2011, 65(6), P409-415.